『存在の耐えられない軽さ』/クンデラ この本の持つ神経質で難解そうな印象に反して、のっけから引きこまれた。 なにしろ、書き出しがこんな感じ。 「永遠の回帰というのは謎めいた思想だから、 ニーチェはこの思想によって多くの哲学者を困惑させた。」 他にも、 「カントの言葉では、正しく発音される“こんにちは”でさえ、 なにかしら形而上学的な命題ににてくることがある。 ドイツ語は重い言葉なのだ。」 などなど、読んでいくと、恋愛小説というよりは、完全に哲学小説ではないですか。かなり好みです。 この作品は比喩表現が多い。恥ずかしげもなく次から次へとこってりした比喩表現が続く。普通ならベタすぎていいかげんにしてくれ、といいたくなるところだが、多くの表現があまりに見事で唸ってしまう。 見事すぎてついついiPhone片手にメモをとりながら読んでました。「ニーチェはデカルトに代わってやってきて、馬に許しを乞うたのだ(p335)」なんて発想がどこから来るのか?クンデラの実力に感服するばかりです。 哲学の一般的な解釈・イメージをうまく使用しながらも、この作品独自のテーマをうまく表現している。もちろん、説明しすぎてない。謎の部分も多く、時代や場所は章によって適当に移り変わり、前後するのでついていきづらい。 そのへんも魅力のひとつなんでしょう。 この小説は、好き嫌いがはっきり分かれるでしょうが、哲学のほか「プラハの春」「ベートーベン」「アンナ・カレーニナ」といったキーワードに興味を覚える方にはオススメです。 この作品は1987年に映画化され話題になっていたので、覚えている方も多いのではないでしょうか。
by hi-g_blog
| 2011-09-19 19:04
| 読書
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