映画『ニーチェの馬』を観てきた。 原題は「トリノの馬」。ニーチェがトリノに滞在中、鞭打たれる馬車馬に駆け寄り泣き崩れ、その後発狂したというエピソードから着想された映画とのこと。この邦題の付け方はいいですね。タイトルにニーチェとつけるだけで観客は5割増しにはなってるハズ。ニーチェ好きは世の中に多いですから。 この映画のことを知るまですっかり失念していたのですが、クンデラの小説「存在の耐えられない軽さ」の中で、この馬のエピソードを引用したくだりが出てくるのです。 “ニーチェはデカルトに代わってやってきて、馬に許しを乞うたのだ” デカルトが動物に心がるのを否定して機械扱いしたこと(動物機械論)をうけての一文(こういう素晴らしい文章を連発するのがこの小説の凄いところなのですが)。「(支配者である人間が)機械扱いしてゴメンね」とニーチェが謝ったわけです。 こういう観点から見ると、この映画の馬のキャスティング、駄馬っぷりが凄い。とにかくしょぼくれててスタイルも毛並みもよくなくて、長年にわたり機械扱いされてきた感がにじみ出てる。キャスティングの際、役立たずで売り飛ばされる直前の馬を探しあてたらしい。 映画の内容はというと、この馬の飼い主である父と娘が人里離れた一軒家で、朝起きて、井戸で水をくんで、着替えをして、ジャガイモを茹でただけの食事をする。会話はほとんどなしでこれを繰り返す。この親子のほうこそ機械のような生活。だれもが“こんな毎日の繰り返しはいやだ”と思うだろう。狙ってるのかどう解らないが、ニーチェの思想「永遠回帰」を彷彿とさせる。もちろん本筋にニーチェは出てこないし、その思想も直接関係ないのでニーチェ好きでなくても観られます。いろんな観点から楽しめるのでモノクロ写真好きや絵画好きにはいいんじゃないでしょうか?ただし、同じことを長回しばかりで、間違いなく陰鬱な気分になる修行のような2時間半です。
by hi-g_blog
| 2012-05-05 17:28
| 映画
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